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執筆者の写真麦っ子

<信念の人―小出裕章先生―>

 ザクロの花が咲き、アンズの実やビワの実が黄色く熟れてきました。子ども達にとって楽しみなことがいっぱいの初夏です。ジューンベリーの赤い実はちょうど食べごろで、土曜保育の子達が朝摘んで、美味しいおやつになりました。これから日差しも強くなります。帽子を忘れずに持ってきてください。汗をかくので適宜洗って、気持ちよく被れるようにしてくださいね。


 先日、小出先生からメールをいただきました。熊取6人組のお仲間である小林圭二さんが亡くなったそうです。小出先生は「命ある者として老いて行くこと、死は必然です。悲しむべきものでなく、ただ受け入れればいいのだと思います。」とおっしゃっていますが、そこまで達観できる人はそう多くはないと思います。みこべの周りでも亡くなる人が多くなって、彼方がだんだん近くなってきた実感があります。その時が来たら「精いっぱい生きてきた」と言えるようにしたいとは思いますが、案外ジタバタするかもしれません……。

 熊取6人組とは、原子力利用の危険性について研究し、追究し続けてきた京都大学原子炉実験所原子力安全グループの6人の科学者の通称です。小出先生はその6人組のお一人で、2016年に京都大学を退官されました。18才で夢のエネルギーと言われていた原子力に憧れて、東北大学工学部原子核工学科に入学しましたが、21才で原子力廃絶を決意してからは、一切原子力の旗は振りませんでした。福島県双葉町に原子力発電所が誘致される時、先生は双葉町に行って、原発は危険だから受け入れないようにと、ビラを撒いたそうです。残念ながら、「安全でクリーンなエネルギーを生む」と言われた原発は東日本大災害による巨大な地震と津波によって爆発し、未曽有の事故が起きてしまいました。

 事故後、小出先生は多忙を極め、どの会場でも真実を知りたい人達が詰めかけて、会場に入りきれない人があふれました。日本中が被災地への衝撃と深い悲しみに包まれ、事故による未来への不安に押しつぶされそうになっていた時です。ある会場では、入りきれなかった多数の人達が会場の周りでスピーカーを通して先生のお話を聞いていました。講演会が終わってから外に出られた先生は「原子力に携わる者として、何とかして事故を防ぎたかったのですが、残念なことに事故が起きてしまいました。汚れた世界で生きるしかない若い人達に対して、誠に申し訳なく思います」そうおっしゃって頭を下げました。映像を通してですが、涙を浮かべて謝罪された先生の姿を忘れられません。あの時の真摯で謙虚な姿勢は、事故から2年後に麦っ子に来て下さった時も、認可後の新しい園舎に来て下さった時も、いつお会いしても、全くぶれることがありません。「私自身は、誰かに期待をかけられるような存在にはなりたくありません」「強い者、強いリーダー、カリスマを求めること自体が誤りです」― 先生はこの言葉の通りに誠実に生きていらっしゃるのです。


 自民党が国策として原子力を推進し、2011年にあれほどの壊滅的な事故を起こしてもなお、原発を再稼働し輸出まで計画している現政権への先生の厳しい眼差しは一貫して変わることがありません。3.11以前、それまで一般の人は1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをさせてはならないと法律で決められていました。けれど、あの福島第一原子力発電所の爆発によって、広島に落とされた原子爆弾の100万発分の放射性物質が噴き出して東日本は汚染されてしまいました。その時日本で初めて出されて事故後8年が経過した今でも解除できないでいるのが「原子力緊急事態宣言」です。緊急事態なので、1年間に1ミリシーベルト以上の被ばくをしても仕方がない…ということになってしまいました。細胞分裂が活発な幼い子ほど放射線の影響を受けやすく、35才の大人の約4~5倍も影響を受けることが分かっています。又どんな微量の被曝でも危険があると国際放射線防護委員会が2007年に勧告しました。あれから8年、福島では小児甲状腺ガンの子が増えています。原発事故との因果関係を国は認めていませんが、幼い子どもや小中学生、若者への被曝を避ける為の努力をすることは、私達大人の責任ではありませんか!?

 だから、麦っ子の食事は細心の注意を払って作っていますし、その為の努力をお台所のひめちゃん達は必死になってやっているのです。毎日お台所の様子を見ているみこべは、こんなに必死に努力していることを、親の皆さんにはぜひぜひ!自分のこととして分かってほしいと思います。国が大丈夫と言っているからと、お店で売られている野菜や食品を安易に買わないでほしいし、せめて我が子の口に入るものはどこの産地なのか気にしてほしいし、分からないことは聞いてほしいです。でないと毎日必死に頑張っているお台所に失礼だと思います。5年後、10年後の未来が安全な世の中であるように願うのは、親なら当たり前のことですが、だからこそ、小さいときに麦っ子のようなしっかりした食事をよく噛んで食べることは基本中の基本です。口の周りの筋肉をちゃんと使うこと、スマホやTVに子育てをさせないで家族の会話をたくさんすること、よく笑うこと、薄着でみんなと外で遊ぶこと、などなど……。


保存済み故によって溶け落ちた炉心は未だどこでどうなっているのかも解らず、壊れた原発の廃炉は100年経っても収束できないだろうと言われています。今生きている私達―大人も子どもも、全員が死んでも安全に始末することはできません。麦っ子はこれからも福島などの被災地に心を寄せて、自分でできることを精一杯していこうと

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