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  • 執筆者の写真みこべ

まもなく8年になろうとしています…

あの日、麦っ子畑保育園はお別れ遠足で虹・太陽は野毛山動物園に出かけていました。2011年3月11日2時46分、東日本大震災が発生。星~雲ぐみ達はお昼寝の最中でみんな熟睡していました。今まで経験したことのない激しい揺れに寝ている子の上から毛布を掛けるのがやっとの状態でした。なかなか収まらない長い揺れに不安がつのりましたが、誰一人として泣く子がいなかったのです。揺れがいくらか収まったのを見計らって園庭に避難。ブルーシートを敷いた上にみんなで丸くなって身を寄せ合いながら、毛布やお布団をかけて様子を見ているうちに、ご近所の方々や親の皆さんが安否を気遣って駆け付けてくれました。幸い旧園舎は耐震工事を済ませたばかりで、おかげでどこも崩れたり壊れたりしませんでした。トッティのお父さんが少しずつ進めて下さった耐震工事はその後も威力を発揮して、かなり強い揺れがきても、物が落ちてきたりどこかが壊れたりすることもなく、今は学童のお部屋として使われています。一方、野毛山動物園にお出かけしていたデカ達は激しい揺れが収まるのを待ってバスに乗り込みました。ちょうど動物園の高台で遊んでいたデカ達、眼下に広がる横浜市街から火の手が上がったのを見たのんちゃんは大変なことが起きたと思ったそうです。携帯電話が繋がらず、アイホンに機種変更したばかりの太陽の担任だったボンちゃんがとっさに麦っ子のHPにアクセスして、デカの様子をHPの掲示板に投稿。麦っ子でもそれを見ることができたので、双方の様子を分かることができて本当によかったです。この経験からネット環境が繋がっていれば、緊急時の連絡手段として使えることが分かりました。

この未曽有の激しい地震と津波は福島第一原発の爆発を引き起こし、福島県、や宮城県、岩手県などに壊滅的な被害をもたらし、原発事故による放射能汚染の被害はいまだ続いています。一度に3基もの原発が破壊される―という、人類史上初めての惨状が私達の暮らすこの日本で起きてしまった……。福島はどうなっているのか、津波や地震で破壊された街はどうなっているのか、情報が錯綜する中で拠りどころになったのが、当時京都大学原子炉実験所に勤務する小出裕章先生の発信でした。原発事故直後「福島の皆さん、すぐ逃げてください」と呼びかけた小出先生の声は刻々と映し出される福島第一原発の映像に重なりました。では麦っ子はどう対応したらいいのか、泣きながら必死でネットから情報を集めて3月14日から一週間、緊急休園を決断しました。放射能の影響を受けやすい子どもや若い職員に自宅待機をお願いして、みこべ達はどうしても仕事を休めない子と麦っ子に閉じこもっていました。窓や換気扇にテープで目貼りをしたり、壁や床を水拭きしたり…。今考えてもあの時の必死の気持ちがありありと思い出されます。事故直後、海に向かって吹いていた季節風が向きを変えて千葉県、茨木県、栃木県、神奈川県を通り抜けていったことも、一般の人々には知らされず、桜が開花する頃にはもう何事もなかったかのように、座間市周辺は元通りの日常が戻っていました。桜まつりが行われている東原の桜並木では、にぎやかに屋台が並ぶ中、若いお母さん達が赤ちゃんを乳母車に乗せて笑顔で散策していたり、近くの中学校では、校庭で砂ぼこりをたてて部活をしている…。正しい情報が流れないってこういうことなんだ、と改めて思い知らされたのです。麦っ子では事故直後から、残留放射性物質を子どもの口に入れない為に食材をどうするか、園庭の砂や木々をきれいにするにはどうしたらいいか、情報を集めながら必死になって対策を立ててきました。それは8年になろうとしている今も変わりません。放射能はそんなに簡単に消えないからです。何度か書きましたが、毎年、ヒヨドリと競争でみんなが楽しみに食べていたサクランボの実に、その年は一羽もヒヨドリが来なかったのです。「今年のサクランボは食べられません」と書いた紙を木に貼りながら、涙が止まりませんでした。

8年目を迎えようとしている今、世の中は原発事故などなかったかのように来年のオリンピック開催を待ち望んでいます。原発事故による放射性物質の問題も「アンダー ザ コントロール」と無責任に宣言したこの国の総理大臣の一声で誘致が決定しました。事故当日発令された「原子力緊急事態宣言」は8年たっても解除できないままなのに…。そんな事態であることを正しく知らされないでのんびりと日常生活を送る私達。オリンピックより先に原発事故とどう向き合うのか、被災地の人達をどう救済して生活を立て直すのか、予算がいくらあっも足りないはずですが関係ないのですね。2月20日、横浜地裁は原発事故で避難している60世帯175人に、東電の責任を認定し国に5度目の賠償命令を出しました。賠償水準が大きく前進した決定ですが、被災者の中のほんの一部でしかありません。故郷を奪われ、人生を狂わされた数えきれない多くの人達を置き去りにしたまま、グルメだの何だのと浮かれている人々が、このひどい国のあり方を容認しているのです。

3月の卒園式を前にして、本当はこんなこと聞きたくないかと思います。でも3月はどうしても3.11を抜きにすることは考えられません。卒園生へのお祝いは卒園文集に書かせていただきますので、申し訳ありませんがお許しください。                        

                         (2019.2.26)

「なじょすべ」  関久雄さんの詩から抜粋

測定所 立ち上げた

この 小松菜は 不検出

よかったら 買ってくなんしょ 

それでも お客さん 三分の一

スギウチさんの 言う       下の 田んぼ 川の水が上がっから

1万ベクレル あるんだよ

                 阿武隈川の 青い 流れを見ながら

                 タモツさんの 言う


ペットボトルの水道水 福島市が 売り出した

すると 世間はこう 言うんだ

カルト そのもの もう犯罪

ストロンチウムは 測ったの プルトニウムは 出てないの

フクシマ県を 閉鎖しろ

なじょ すべなあ

                 おめさん方よ

                 確かに オレも食わねえし

                 飲んでくれとも 言わねえが

                 悩む こころに 沿うてくれ

                 オレたちに 欲しいのは 

                 痛みを 分かつ こころだよ



関さんは福島県二本松に在住しながら、原発事故後避難できなかったで子ど

も達が、普通に遊んだり、少しでも健康を取り戻すことができるように、佐渡

島に「へっついの家」を立ち上げて、夏休みや春休みなどの間、安心して過ご

すことができるように奮闘しています。

関久雄さんの詩集、麦っ子にあります。読んでくださいね。

「へっついの家」へのカンパも続いています(みこべまで)。



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