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  • 執筆者の写真みこべ

<命を考える>

 このところの大型台風に伴う暴風雨や異常な降水量による被害の大きさに言葉を失っています。広範囲の河川決壊など、今まで私達が遭遇したことのない規模の災害があちらこちらで起きて、未だに被害の全容が見えていないそうです。被害に合われた皆さまには心からお見舞い申し上げます。一日も早くライフラインが復旧して、日常の生活に戻れますように―。

10月11日は、「今まで経験したことのない大型の台風が接近、もしくは上陸の恐れあり」とのことで、TVなどからは「まず命を守る行動をしてください」と緊迫したアナウンスが流れ、12日に保育園を開けることはとてもできないと思っていました。どうしてもお休みできない家庭があったとしても、保育をするためには職員を確保しなければなりませんし、万一、麦っ子のそばを流れている目久尻川が氾濫した場合、子どもや職員の安全を保障する確固とした対策も立てにくいと思いました。しかし、市の保育課では「保育園を休園するということは言えない」とのこと。やがて時間の経過につれて、「休園するのであれば保護者との間で意思確認をするように」→「公立保育園が休園になるので、私立保育園も休園にしてもかまわない」→「対応が不十分だったことをお詫びします」という対応に...。切迫した状況の中で、「子どもの命を守る」という視点が希薄だったと思いますし、「公立保育園を休園にしたからお好きにどうぞ」と言われたようで、何とも嫌な気分になりました。これって、今回の政府対応に通じるものがありますよね?…情けないことです。

明けて12日は、ひっきりなしにケイタイから警戒警報が鳴り響き、麦っ子でも避難を余儀なくされた家庭もあり、13日に運動会を控えていましたが、全家庭と職員の無事を確認できなければとても運動会どころではないと判断して、14日に延期を決めました。幸い、栗原小学校の体育館をお借りできることになっていたので、運動会は無事に行うことができました。さまざまな形でご協力いただいた保護者の皆さま、関係者の方々、ありがとうございました。

13日早朝、千曲川が決壊して濁流が溢れている映像が流れました。あの辺りにはみこべの中学生の頃の友人達が住んでいたり、果樹栽培をしている人も多いので本当に心配でした。千曲川があんなことになっているのは見たことがありません。同じ長野出身のペロちゃんと「これは大変なことになった」と、気が気ではありませんでした。

日本中が大変なことになっているのに、この国の総理大臣は台風の最中にフランス料理を楽しみ、ラグビー観戦で「夢のような一カ月だった」とツイートし、閣僚たちにも失言(実は本音だよね)が相次いでいる…。いったいどうなっているのでしょう。国のトップがこうだから日本中が情けないことに慣れてしまったのか、怒ることもモノを言うことも置き忘れているのか……。

10月22日、日本人初の女性国連大使として、国連難民高等弁務官や国際協力機構理事長を務めた緒方貞子さんが亡くなりました。「緒方さんは国連のトップに立ちながら、現場への温かい目線を忘れず、一人一人の命を大切にする人」(前松坂市長・山中光茂さん)で、「現場に身を置き、川下でおぼれている子どもを救うことは大事。そして、川上にいて子どもがおぼれるのを防ぐこともおなじくらい大事です」とも話していたそうです。難民には国境を越えていなくても支援すると決め、「難民が生きているからこそ保護できる。国際法がどうであろうと生き続けるようにする」という言葉どおり、スピードを持って、現実主義を貫きました。人の命を守りたいという思いと情熱から生まれた緒方さんの仕事は、人々に感銘を与え続けました。多くの人を救い、希望となった緒方さんのお思いやりの灯を、私達もともし続けるお手伝いができればと思います。  

                       (東京新聞参照)

おりしも、11月1日に「安藤誠の世界」が開かれました。奈良裕之さんから紹介していただいたヒッコリーウインドに伺ったご縁で、もう10年以上、年に一度のペースで麦っ子に来て下さっています。北海道公認マスターガイドのプロであり、写真家としてもいくつものグランプリを受賞して、(米)スミソニアン博物館に招かれている安藤さん。今回も美しい映像と共に、北海道やアラスカの生き物達を紹介してくださいました。衝撃だったのは、去年一年間に北海道で殺されたクマが300頭に及んだこと。クマは人を襲う悪者としてイメージを植え付けられているが、本来は草食動物のやさしい動物で決して理由なく人を襲ったり食べたりはしないこと。人間の勝手な思惑で殺されていく命…。去年まで兄ちゃんクマと楽しそうに遊んでいた妹クマは、出産して子熊を育てていた時、人間の自分勝手な行動で驚かせたあげく殺されてしまったこと…。子ども達は身じろぎもしないで聞き入っていました。午前中のスライドショーを見た太陽達は「もう一回見たい!」と藍ちゃんに頼んで、午後からの学童の部も一緒に見たうえ、3回目の夜の部も見た子もたくさんいました。回を重ねるうちに、どんどん子ども達の心が深まっていくのがわかりました。そこにいる大人も小学生も麦っ子達も一緒に過ごした時間の素晴らしさ、どんどん場が熟成されていく―そんな感じでした。安藤さんの映像とお話の素晴らしさは勿論のことですが、一人一人の子ども達の感性や魂の響き合いが高めていく場の心地よさに、何度も涙がこみ上げました。夜、どうしてあんなに涙が出たんだろう?と考えましたが、あれは間違いなく子ども達の力だったと思います。のんちゃんもよく言っていますが、今年の太陽や虹の子達は、メエタンやウサギ、コッコ、カメにアンとルジアがいるのが当たり前の生活の一部になって一緒に過ごしています。そんな中で、動物たちに心を預けて元気になったり、癒されたりしながら、せっせと労を惜しまずウンチやオシッコを片付けてごはんをあげている―。だからこそ、安藤さんのクマの話を自分のこととして受け止める子が多かったのではないでしょうか。命に上下はないこと。人間の勝手な理屈で殺していい命なんか絶対にないこと。お食事でいただく野菜の命、小魚の命を粗末にしないこと。感謝していただくこと。―全てが繋がっていることが理屈を超えて飛び込んできたのだと思いました。麦っ子はお勉強や習い事を優先しない保育園ですが、生きていく基本の感性や知恵を学んでいる場であると確信しています。どんな子も受け入れたいと思ってやってきた麦っ子ですが、誰がいても一緒に遊んでいる中に自然に動物達がいる生活。今の現代的な暮らしの中では望んでも得られない毎日の積み重ねがあることに心から感謝した一日でした。

                      (2019.11.2)

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