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  • 執筆者の写真みこべ

<隣人の痛みにどう向き合いますか?>

 ツワブキの黄色い花が咲き、目久尻川ではジョウビタキが鮮やかなオレンジ色のお腹を見せて飛んでいます。あんなに暑かった夏はどこかにいって、朝夕肌寒さを感じるような季節になりました。大人達は早速厚手の上着やトレーナーをはおっていますが、子どもは元気そのもの!麦っ子に着くとすぐに上着をパッと脱いで半そでやランニングシャツになって飛び出します。大人が心配するほど子どもは寒くないことが多いのですね。ベストでお腹を暖かくして、手足を出して遊ぶのが風邪の予防になります。風や寒気に皮膚をさらすことで、自律神経を刺激して免疫力が上がります。そして身軽なかっこうでよく動くと、呼吸器系にもいいのです。麦っ子名物冬のマラソンは、冷たい空気が肺までしっかり届くので、これまた呼吸系に良い作用をもたらします。ロシアなど極寒の地域では、初めての冬に赤ちゃんの体を毛布などでぐるぐる巻いて帽子をかぶせ、顔を冷気にさらして呼吸させることが、厳しい寒さから命を守る知恵なのだそうです。この冬は半そで、半ズボンで頑張ってみませんか?お腹がゆるかったり風邪気味の時は、①レッグウォーマー(冬用のソックスの足首だけを切って応用すればOK)②靴下をはく③長ズボンをはく④長袖を一枚はおる~の順番で対応してみてくださいね。


 ジャーナリストの安田純平さんが無事帰国しました。けれど民主国家を標榜する私達のこの国では「自己責任」という批判が渦巻いています。2004年、高遠菜穂子さん達3人の日本人がイラクの反米武装集団に拘束された事件が起きた時、渡航禁止勧告に反してイラクに入国した、ということで、猛烈なバッシングと「自己責任」論が日本中に広がりました。今回はネットを含めてそれ以上に増大した批判の矛先が安田さんに向けられています。安田さん自身が、ジャーナリストの後藤健二さんがシリアで拘束された映像が流れた時、「勝手に危険なところに行って迷惑だ」という声が巷にあふれましたが、「…こんなことは日本くらいじゃないかと思う」と話していました。政府が「行くな」と言っている場所に行って拘束されたから、それは自業自得なのでしょうか?どんな理由であれ、日本人が海外で拘束された場合は、全力を挙げてその日本人を保護し、救出するのが日本政府のするべきことではないかと思います。まして命が助かって無事に帰国できたことを「よかったね!」と無条件に喜び合うのが私達の姿ではないでしょうか?安田さんのお連れ合いが「大変申し訳ありませんでした」とマスコミに向かって謝った姿を見て胸が痛みました。「おかげ様で無事帰国できました。ありがとうございます」ではいけなかったのか…。いったい自己責任ってなんなのでしょうか?


 安田さんは、この世界で起きている戦争や紛争、大量殺戮について、その現場に出かけて自分の目で見て取材するために、命の危険を覚悟して自らをその地に向かわせたのです。私達は、危険で簡単に立ち入ることのできない地域の現実を知る手段がほとんどありません。安田さんのように、困難を承知で自らの足でそれらの地域に入って得た貴重な情報から、かろうじてその一部を知ることができるのです。でなければ、世界のどこかで起きている非業の日常に耳を貸さなくても済みますし、見なくても済みます。食べ物がなくて死んでいく子ども達のことも、清潔な飲み水が手に入らなくて泥のような水を飲んでいるたくさんの人達のことを知らずに済ませることもできます。日本政府が沖縄に押し付けている基地の現状も、辺野古の海の惨状も、きちんと報道されなければ、遠い世界の出来事のままスルー出来ます。原発事故後、避難を余儀なくされた福島の人達の日常も、その痛みを感じることのないまま安楽な毎日を送ることができます。面倒なことからついつい目を背けてしまう私達―。なかなか出会うことのない障がいのある人達、激烈なヘイトスピーチに傷ついている在日の人達、陰湿ないじめで苦しんでいる身近な友人などなど……。

 図らずも安田さんの帰国をめぐって起きた自己責任論は、私の中に潜んでいる排除や差別の意識に改めてキッチリと向き合いなさいーと突きつけるきっかけになりました。麦っ子で毎日「困っている人に知らん顔してはいけないよ」

「泣いている人を放っておいてはいけないよ」「自分が嫌なことをお友達にしてはいけないよ」と、面倒でも口うるさくても見過ごさないで言い続けていることは絶対無駄なことではないと思うし、ケンカをした後で、たとえ泣いていても「もういいよ」と許しあえる麦っ子の子を心から誇らしく思います。そして多くのリスクを覚悟のうえで、今回のことにしっかりと自分の意見をツイートしているダルビッシュ有さんに拍手を送ります。


 「危険な地域に行って拘束されたのなら自業自得だ!と言っている人たちにはルワンダで起きたことを勉強してみてください。誰も来ないとどうなるかということがよくわかります。」

「一人の命が助かったのだから、自分は本当に良かったなぁと思います。 自己責任なんて身の回りに溢れているわけで、あなたが文句をいう時もそれは無力さからくる自己責任でしょう。皆、無力さと常に対峙しながら生きるわけで。人類助け合って生きればいいと思います」

「日本が戦争していてたくさんの人が殺されているなかで世界のどの国もが知らんぷりだったらどうするんだろう?」

          -ダルビッシュ有さんのツイートより-

                            (2018.10.31)

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